原作吾妻鏡をもとに描かれる「鎌倉殿の13人」。
幕府2代将軍源頼家は史実に描かれた通り、不幸な最期を迎えることになる。
オリジナルの死に方とは微妙に違うが、暗殺された事実は同じ。
伊豆修善寺において、北条義時が差し向けた刺客によって、殺害される。
私が調べたところでは吾妻鏡など、記録に残った殺害のされ方では漆の風呂に漬けられて体中が腫れあがって死んだと聞いた。
いくらなんでもそれはやり過ぎだろうと思うが、実際には殺し屋によって殺害されることには変わりは無い。
今回殺しの依頼を受け取ったのはやはり、善児とトウ。
凄腕の殺し屋の2人が、しっかりと任務を果たすことになる。
それにしても脚本の組み立ては舌を巻くほどの巧妙さ。
登場人物の誰と誰の思惑が背景にあって物語が動いていくのかが、よくわかるように出来上がっている。
そして、さらに凄みを感じるのは今日描かれた物語の中で、坂東武士の御家人の1部に北条家のやり方に対する疑問が呈することになっていた。
実は、これから物語で起こることに対する布石が貼られている。
今絶好調で活躍している登場人物たちも、そのことごとくがこの物語の最後では退場する運びとなる。
それら全てが粛清によるものと聞いたら、あまりにも殺伐とした物語ではないか。
しかし、鎌倉幕府とはそうした時代背景の上に成り立っていた。
目次
3代将軍源実朝と初代執権北条時政
3大将軍実朝が即位した段階では、まだ2代将軍頼家は伊豆修善寺に追放されたまま。
仏門に入ると言う名目だったが、当の本人はまだ23歳。
自分が不本意に失脚させられたことに怒り心頭。
1連の物語を見ていればその事情はよくわかる。
頼家は一旦死にかけた。
周りのものは死んだこととして次の手順を。
一度死んだものが復活しても、そのまま「お帰りなさい」とはならなかった。
鎌倉幕府の弱点は絶対君主が仕切っていたわけではないこと。
源頼朝のようなカリスマはすでにこの世にはいない。
残った人たちの合議制で幕府の運営は機能させることになる。
この時、北条時政が妻りくに促されて采配を振るうことになる。
彼女は、己の自己顕示欲のために夫を利用する悪女として描かれている。
この物語の巧みさは、それぞれの登場人物のキャラクターが違和感なく機能していること。
時政は愛妻に請われるまま、少しずつ自分勝手な暴走を始めるのだ。
遠くない将来、夫婦揃って鎌倉から追放されることになる。
鎌倉幕府と後白河法皇
後白河法王は平家に代わる武家の棟梁として源氏の存在価値を認めていた。
しかし、好き勝手なことをされても困る。
ましてや幕府を牛耳っている北条など御家人の1家系に過ぎぬ。
そこから様々なアプローチをされても、まともに応えようとはしない。
ただし、後白河法皇には思惑があって、源実朝を自分の側に取り込もうと画策していた。
そのためには飴と鞭を巧みに利用する。
実は、後白河法皇はこの後、鎌倉幕府に反旗を翻すことになる。
歴史でも超有名な事件承久の乱。
ここでは、鎌倉幕府とはすなわち北条氏を指している。
後白河法皇は北条氏の台頭を決して認めたくはなかった。
調べれば出てくるが、北条義時追討の院宣を出すことになるのだ。
そのことに対抗する北条氏と、法皇との戦い。
実は、この物語の奥深さはそこだけでは済まない。
この後源実朝は朝廷の思惑通り京都に憧れる生活を送ることになる。
その結果、幕府の中に新たな亀裂が生じて、自ら身内によって粛清されることになってしまう。
鎌倉幕府では3代将軍実朝を暗殺したのは彼の甥、公堯。
源氏は自分の身内で殺し合いを続けてきた。
源頼朝の子孫がすぐ後で途絶えてしまうのも納得できる。
これではとても子孫が育つとは思えないから。
修善寺にて2代将軍頼家
源頼家は北条家に対する復讐を誓っていた。
そして様々な手段を用いて朝廷から北条氏追悼の院宣を得ようとする。
この辺のやりとりは全て筒抜けだったが故に、物語で描かれたような暗殺事件が起こってしまう。
このときの一件で善児はトウに殺される。
この2人は師匠と弟子の関係だが、トウは善二の事は自分自身の両親の仇として認識。
いずれ、チャンスを狙って殺そうとずっと狙っていたようだ。
善二は唯一自分が心通わせるようになった一幡への思いで手元が狂ってしまい、頼家暗殺の手元が狂ってしまった。
頼家への止めはトウが。
源頼家暗殺
時代劇といっても戦闘シーンは大河ドラマではそれほど多くは無い。
今日の殺陣のシーンはいかほどのものかと期待していたが。
驚くほど巧妙に組み立てられていた。
やはり殺し屋として選ばれたのは善児とトウ。
暗殺者が紛れ込んでいることに気がついた北条泰時。
彼がこの場で暗殺者を見つけてしまうことを北条義時はどうやらわかっていたような。
こうやってばれてしまうことも計算の内だったんだろうか。
善児は泰時の殺害は止められていたと語っていたね。
巧みな演出に感心するばかり。
歴史の中で積み上がる怨念
鎌倉幕府はこの後粛清が続き、当初出発した13人はことごとくいなくなってしまう。
歴史的には北条義時は極悪人とされる。
彼は自分の父親北条時政夫婦を追放して自身が2代目執権に収まる。
そしてその流れは3代執権泰時に引き継がれることになる。
鎌倉幕府は将軍1人を立ててはいるが、実権は北条が握っていた。
物語はここから先また大きく動くことになる。
来週にかけても大勢の犠牲者が出る事は間違いない。