どうする家康はいよいよ物語の佳境部分が絵描かれることになる。
天下分け目の関ヶ原で知られる東軍西軍の戦いは知らぬものがない。
このドラマでは歴史的な事実を擦るばかりでなく、時代劇ドラマとしてどれだけの脚色が可能か脚本家を始め政策スタッフたちが精魂込めて努力した結果が披露された。
物語全体を貫く流れとしては、歴史に残る通り西軍の側にいたはずの小早川秀秋が裏切ることが勝敗の行く手を決定したとされる。
裏切りに至るまでの様々な駆け引き。
それぞれの責任者たる石田三成と徳川家康に対する勝負のしどころを見極めるカンの良し悪しが、歴史ドラマとしての面白さを際立たせていたようにも思う。
ドラマとして見たときに面白さの真骨頂はなんといっても巧みなストーリー展開。
誰がどのように誰を調略していたのか、その駆け引きは俳優たちの渾身の演技力によってより際立っていた。
私の個人的な感想では、石田三成を演じた中村七之助がさすが歌舞伎役者と思わせるずば抜けた説得力を醸し出していたと思う。
そして茶々を演じた北川景子のすごみ。
歴史には淀殿と伝わる彼女がどのような立ち位置で物語の中に存在したか、彼女の揺れ動く心情こそが、関ヶ原の戦いの行く末に大きく関わってくる。
さらには徳川家の忠臣たち。
彼らがいたからこそ、家康は存分に戦うことができたはず。
そして家康に調略されて結局は取り込まれてしまっていた毛利輝元。
物語の中では、彼が1番の卑怯者として描かれたと思う。
そして今日のエピソードの真骨頂は、家康と三成の1対1の対話。
物語の脚本家が自らの歴史観を2人の武将の発言として反映させていた。
完成度の高い関ヶ原の戦いを描いたドラマになっていたと思う。
目次
関ヶ原の戦いそれぞれの布陣
布陣図を見て感じるのは西軍の方が有利な配置になっていること。
東軍は必ずしも充分な備えがあるようには見えない。
見てわかる通り、敵がぐるりと周りを囲んでいる。
このままやり合えば、側面や背面からの攻撃で一網打尽にされてしまうこともあり得るだろう。
もちろん、家康はそのことを承知での配置を成したようだ。
徳川家康にとって軍事作戦の師匠とも呼べる存在は武田信玄。
家康は武田信玄の兵法を自らのものとして作戦計画を立てる。
つまり、戦う前にまず勝つための形を作る。
関ヶ原の戦いの場合それはすなわち調略。
物語で採用されていたのは、西軍の中に奥深く入り込んだ家康の調略。
家康の思惑
家康は西軍の要になって担ぎ出されている大将が毛利輝元であることをあらかじめ把握していた。
そしてそこに全力を込めて調略活動を仕掛けていた。
歴史の1時資料にも伝わるが、毛利輝元は関ヶ原の戦いでは出陣しないようにあらかじめ家康から釘を刺されていたようだ。
毛利輝元は見かけによらず大変な野心家だったようだ。
同じように輝元の配下の武将たちも、調略されていた。
三成の魂胆
石田三成は豊臣政権家においては最も優れた策略家とされる。
彼が知略の限りを尽くして家康に罠を仕掛けていた。
関ヶ原には自らが家康を引き摺り出したと考えたようだ。
しかし、この物語の最後の方でわかるが実際には家康が三成を手玉に取っていたことがよくわかる。
家康は罠にかかったふりをして、自らの軍勢を動かし三成の前に前進する。
徳川家康は戦のなんたるかを知り抜いていた。
兵隊たちは何を目標に何を励みに戦えるのか。
この場合、大軍勢を意のままに動かすためには石田三成は能力不十分とみなしたようだ。
実際にそれは見事に的中。
三成が味方と思っていた様々な武将たちは、家康からいいように丸め込まれていた。
そのことに気づかなかった石田三成はやはり家康を駆逐することにはならなかった。
駆け引き
茶々は豊臣の家が存続できることこそが自らの希望だと思っていたようだ。
自分の息子秀頼は自分の意のままに動く。
三成の求めに応じて、総大将として秀頼を関ヶ原に派遣する。
それを止めたのが、毛利輝元。
既に毛利は徳川に取り込まれていた。
茶々の思い通りにはならない。
これは命がけの調略だったろう。
今回のドラマの中でも1番のキーパーソンはやはり小早川秀秋とされた。
歴史に残る小早川は物語で描かれるようなかな勇猛果敢な武将ではない。
関ヶ原の戦いの後若死にしてしまう運命だが、裏切り者の汚名を着せられてずいぶん苦しんだと歴史には伝わっていた。
本当のところはよくわからない。
おそらくその時の勢いで進むべき道を決めた可能性も。
既に、勝つためのらゆる布石をなし終えていた家康。
勝利を確信した布陣を敷くことになった。
家康と三成
家康と三成の全力の会話が物語を引き締めていた。
これは脚本家の歴史感そのものと言っても良いだろう。
どちらに正義があって非があるとは言えない。
しかし戦場となれば必ず雌雄を決するしかない。
歌舞伎役者中村七之助の重厚な演技が光っていたと思う。
ダテに歌舞伎俳優じゃないなと。
勝者のを演じた松本潤の存在感を凌駕していたかも。
歴史ドラマとして見事に完成されていた。
どうする家康はいよいよ徳川幕府樹立の様子に突入する。