仕事をリタイアしてからはネットとテレビ三昧で過ごす日々が続く。
どちらかと言えば続き物のドラマはほとんど見ない私が、唯一見ていたのが朝ドラだけど。
昨年ごろからは、夜の時間帯で放送されるドラマなども盛んに見るように。
今回見たのは8月の末から全8回で放送されたNHK金曜のドラマ白い濁流。
初回を見た時から、興味を引くような面白い作りだなと感じていたのでそのまま続きでずっと見ることになった。
夜10時からの放送なので、録画をして翌日見ることに。
食品業界の闇を描いたとされるこのドラマ。
ありがちな話だなと思うと同時に、全くありえない話でもないんだろうなと、不思議な納得感を覚えたもの。
見終わった感想は、とてもよくできていたドラマだったので、ブログとしてもアップすることに。
目次
原作 小薮浩二郎
このドラマを見たときにすぐに気になったのが原作者が誰なのか。
そこで分かったのは原作者は結構なお年の方で、食品業界の添加物等の研究畑でずっと長く過ごしてこられた方。
このドラマはまさに彼自身の最も得意な分野をコーディネートして作られている。
自分自身の体験に基づいた物語と言っても過言ではないくらい。
実際に物語の中で描かれた数々の不正が、現実問題として起こっているのかどうかはそれは定かでないが、そういったドロドロした人間関係の中に事実が隠蔽されるような、そのような世界が私たちの生活の基本となる部分を担っていると思うと、やや恐怖を覚えないでもない。
そのぐらい恐ろしく、ドロドロした内容で物語が進んだ。
おそらく彼が仕事の中でさまざまに経験してきたことを、(もちろん伝聞だと思うが)巧みに利用して物語に取り入れたようだ。
俳優たちの魅力
主役を演じたのは伊藤淳史。
相手役には佐々木希と桐山漣。
ちなみに主役の伊藤君はこのドラマの撮影中に第三子を授かったとの事。
彼は結婚してすでに3人の子供を持っている。
また、紅一点だった佐々木希。
彼女は結婚して子供ができてからしばらく仕事からは遠ざかっていたような気がしたが、このドラマから仕事に復帰したようだ。
演技の上手い下手は別として、美人が一生懸命演技をすればそれなりに様になってしまうから。
このドラマで役者としても好感度はかなり上がったと思う。
ドラマとして面白いかどうかはなんといったって俳優の演技力に負うところが多い。
若手がいっぱい登場していた作品だけど、それぞれに存在感があったと思う。
注目は健気で体に障害を抱えた主人公の奥さんを演じた藤野涼子
まだかなり若い女優さんのはず。
初めて見たのは有村架純が主演していた“ひよっこ”
主役の同級生の役柄を好演していたと思ったね。
真ん中の少女は寝たきりの役柄だったけど、記念撮影のときには元気な姿。
当たり前だけど、こうして皆経験値を上げていく。
ドラマの中で描かれた人生が狂っていく事実
主人公はしがない雇われ研究者の身の上だったが、ある時 画期的と思われるペプチドを発見。
それはうまくいけば世の中に大きく貢献できる大変な発見だったはず。
事業として拡張すべく、会社の中に入って努力を重ねるが、しかしそこはドロドロした欲望渦巻く世界。
不本意と思いながらも闇の世界へとずるずると入り込まざるをえなくなってしまう。
自分自身の欲得と捉えた時に、どんなに素晴らしいことも、邪悪な垢にまみれてしまうしかないのだ。
激しく自分の中で葛藤を抱きつつ、次々と犯罪行為にも手を染めざるをえなくなった。
そしてやがて自ら犯罪に手を染めて、そのことが発覚。
潔く罪を認めて服役せざるを得なかった。
その中では主人公以外にも様々な立場の人たちが自分の欲望を優先するがために、限りなく不正に手を汚していく姿が克明に描かれていた。
昔から医療系や、薬品系の世界ではこのような邪な事柄が横行していることもあったのかもしれない。
物語の中で描かれていたのは、経済を優先すればスピードがなんとしても求められる。
それに対して研究畑では焦りは禁物なのだ。
急げばミスを犯す確率が幾何級数的に跳ね上がって、後からトラブルが起こったとしても自ら責任を取らざるを得ない。
物語は食品添加物の世界を描きながら、現代社会が抱える闇の部分を克明に描いていたとも言える。
コロナ禍で我々の生活は一変した。
信頼性のあるなしにかかわらず、効果があるとされれば多少のリスクはさて置いてもそれを利用するしかない世の中のシステム。
ワクチンなども、臨床試験を満足に行えないままそのまま採用されたと聞いている。
どんなに準備万端な事柄でも多少の誤謬は生じるので、100%のものなど世の中に存在はしないが、ドラマの中で描かれていたそれぞれの分野の人たちのスピード感は全く異なっているにもかかわらず、それを無視することで犯罪に手を染めていく様子が克明に描かれていた。
主要な物語が終わった後の数年後を描いたところが秀逸
証拠を隠蔽するために、ついに犯罪に手を染めざるを得なかった主人公。
彼には夫を全力で支えようとする病弱な妻がいた。
命をかけて子供も産んでくれている。
服役して数年経った後、出所して初めて子供と出会うことになる。
ここまでを描くことで物語の信憑性が大きく増したのでは。
そして、頂点を登りつめておきながら、また元のしがない暮らしに戻らざるを得なかった主人公の様子。
人生の選択を誤ったとかそういった類の物語ではない。
人として何が1番大切なのか、そしてどこに夢や希望が存在しているのか。
そういったことに対する問いかけが物語の最後で語られていた。
久しぶりに見ごたえのあるドラマだったと思う。
少なくとも私にとっては、娯楽番組の領域の物語ではなかったな。