万太郎たちは学会誌の第2号で新種のヤマトグサの発表を終えて意気揚々としていた。
しかしその裏では植物学教室の田邊教授には厳しい現実が突きつけられていた。
教授が力を注いで研究していた戸隠草はイギリスに留学した伊藤孝光によって新種発表の先を起こされてしまったのだ。
おおよそ学者と呼ばれる人たちは、様々な競争の中で生きていくしかない。
特にこの時代の植物学は新種発表で値打ちが問われることになる。
せっかくの研究ももし先をこされたならば、それは実を結ばないと言える。
今日、描かれた物語では学術研究が置かれた厳しい状況が詳しく説明された。
一人ひとりの学者たちは、常に自分自身と戦いを強いられる。
物語を見ていてわずかだが違和感を感じた。
もし、新種発表の先をこされたなら積み上げてきた研究が全て無駄になってしまうというのはちょっとおかしい気がする。
もとより、学術研究は順位を競い合うものではないだろう。
勝ち負けが存在すること自体が既に本来の目的を外れている気がしたが。
研究の本質は、探究心と好奇心。
そこに優劣をつけるのは、あまりに切なく下世話な気がする。
物語の中では藤丸が研究者の実情に失望して席をはずすシーンが描かれていた。
その気持ちはわからないでもない。
徳永助教授と大窪講師はそれを乗り越えて頑張ることに意義があると。
ブラック田邊は自分自身の研究が無駄になったと思い込んで、失意の中にいる。
彼の妻とのやりとりで、心の闇も表現されていたと思う。
さて、厳しい競争原理が働く中で、万太郎はどんなふうに研究生活を続けるんだろう。
目次
植物学教室
万太郎たちがヤマトグサを発表、した事は植物学教室としても体面を保てたことになる。
しかし、一番力を入れていたはずの戸隠草は先を越されたことで、今までの研究成果が日の目を見る事はなくなってしまった。
東大の植物学教室は、学問所としては日本でトップの位置にあるが故にどうしても成果が求められるところ。
本来研究活動は地道でストイックなもの。
誰かと競い合うことなど鼻から想定などしていない。
このような学問所では、1位以外は実は評価されない厳しい現実がある。
4年生の藤丸は、そういった厳しい現実に激しい反発心を抱いている。
植物学の本質を考えれば、競争原理は全く相容れないシロモノ。
ひっそりと研究活動を続ける者と、世の中に発表して名声を勝ち取りたい者との大きなギャップが存在しているようだ。
戸隠草をめぐる争い
ブラック田邊は戸隠草がイチオシ。
ロシアに標本を送った回答の中に、きちんと花を咲かせたものを標本として提出してほしいと返事があった。
そのためにわざわざ植物園に移植して花が咲くの待ち続けていたのだ。
しかし、戸隠草はシーボルトの助手の孫である伊藤孝光がケンブリッジ大学から、新種として発表してしまっていた。
伊藤孝光はおじいさんの代から3代続けて戸隠草の研究を続けてきたと語っていたね。
おそらくブラック田邊はそういったことを知りつつ、自分自身の研究として割り込みしてきたのかもしれない。
伊藤の孫は、そんなやり方を許せないと考えていたようだ。
その結果の新種発表と言うことになる。
植物学者の矜持
植物学者は、ただひっそりと草花に向き合って研究を続けるだけでは行き詰まってしまう。
研究内容を世の中に発表して認められる必要があるのも事実。
そして研究には相応の資金も必要になるだろう。
そのことも踏まえた上で、植物学者として襟を正さなければならない。
本より研究に集中する事は孤独で周りとのやりとりは疎遠になってしまう。
しかし、少しでも意義のある仕事をしようと思えば、世の中に発表してきちんと評価してもらう必要があるわけで。
学者を名乗るなら、そこまでのカラクリをしっかりと踏まえておく必要が。
好奇心や探究心だけでは成立しにくい厳しい現実が待ち受けている。
それは、デリケートさと相反するさ豪胆さが求められることになるのだ。
教授夫妻
失意のブラック田邊。
意気消沈して、自宅に戻ってきて妻とのやりとりが描かれていた。
教授の妻に対する気持ちが端的に表現されていたね。
妻の聡子はお手伝いさんよりも先におかえりなさいを言いたくて、外の寒い中で主人を待っていると言う。
夫に優しい言葉をかけるも、夫は話してもわからないと冷たく突き放す。
ブラック田邊の人あたりの限界がこの辺にあるんだろう。
彼は、自分自身こそが世の中で1番偉いと思っているようだ。
研究者としては、ピントがずれているのかもしれない。
まとめ
物語の描き方として明日のエピソードに期待を持たせるような方法が採用されている。
暗い部屋の中で1人横になっている寿恵子が写し出されれば誰だって何があったかと思うだろう。
ちょうど妊娠初期と思われるので、つわりの真っ最中だろう。
予告編でもそれらしいシーンがあったと思うので、特別心配することもない。
今週の展開に大いに期待する。