日曜日の夜10時からやっていたこのドラマは昨日の夜、最終回が終わったばかり。
全8回で放送されたドラマ。
実は、最初はとくに見る気も起こらなかったドラマだったが、番宣などを見ているうちに1回見てみて、若干興味が湧いて、回数を重ねるうちに引き込まれたドラマだと言える。
見ているうちにいろいろ調べたくなってみて誰が原作なのかと思って見たら、昨年度の本屋大賞の第2位を受賞した小説「ライオンのオヤツ」がオリジナルの作品として既に広く知られていた。
小説を書いたのは作家小川糸さん。
そこから少しずつ調べてみると、彼女の死生観が丁寧に描かれることで大勢の人たちの共感を呼んだものと解釈。
今回ドラマとして見て、何よりも感心したのは主役を演じていた土村芳の圧倒的な説得力。
どうやらこのドラマにかけていたと言い切るほどの思い入れがあったようだ。
私なりに全部の回を見た感想をアップしてみたい。
目次
物語はホスピスが舞台
ここにお世話になる人たちはほとんどが余命1年2年の宣告を受けた人たち。
主人公を演じているのが土村 芳(つちむら かほ)
名前の漢字がちょっと読みにくいかも。
そしてマドンナさんを演じているのが鈴木京香。
今の朝ドラの主人公モネのお母さん役でみんなが知っている。
さて主役の雫。
彼女は29歳で癌を発症。
余命数年の命とされたようだ。
自分の仕事一切合切から手を引いて、誰ともコミニュケーションをとることなく1人で過ごそうとこちらの施設にお世話になることに。
その時の1連のやりとりが物語として描かれる。
物語の題名にもなっているライオンのおやつ。
こちらの施設では午後3時にみんなからリクエストを受けて全員でおやつを食べる習慣が。
ここで読み上げられるエピソードがこの物語の真骨頂とも言えるだろう。
もちろん、死期が近い人たちは食事などできるはずもない。
この施設には専任の食事担当者や、看護師、そしてドクターも常駐している。
普通に過ごしているだけなのでなにがしかのレクレーションは必要だろう。
みんなでおやつを食べることもその中の1つだと言える。
あくまでも主人公は施設に入所している人たち。
皆それぞれの病気を抱えながら、やがて来るだろうお迎えを待っているのだ。
ユニークな登場人物と主人公
癌で少しずつ痩せ衰えていく雫。
その様子を演じている土村芳の演技力は見事としか言いようがないだろう。
個人的なことになるが私も両親ともに癌で看取った経験が。
どんなふうに衰えていくのか手に取るようによくわかっているが、このドラマの描き方だと役者の演技力に全面的に頼るしかない。
それは肌の色つやや目の輝き、そして大切なのは言葉を発するときの勢いなのだ。
様々な映画やドラマを見たが、死んでいく者たちが力強くセリフを発する事はありえない。
昔“太陽にほえろ”と言うドラマがあった。
その時の誰だったか記憶に残る有名な殉職シーン。
そこでこれから死んでいくだろう俳優の演技なのだが、セリフがあまりにも元気よく勇ましくて見ている方がちょっとひいちゃったことが。
これから息を引き取ろうと言う人は声を発することもできなくなるのだ。
もっと正確に言うならば、死ぬ前の数日間は意識が混濁して現実と夢の世界の区別がつかなくなるようなことも。
今回のドラマではそういったことも実に巧みに描かれていたと思う。
人の生き死にを描くと言う事
ドラマの真骨頂は最終回にあったと言えるだろう。
意識が混濁し始めた雫は、ほとんど夢の中だが、かつて亡くなった親しい人たちと再会を果たすことになる。
意識があるうちに様々なお願いを周りの人たちにしておいて、その後命終の時を迎える。
特に彼女がまだ幼いうちに亡くなった母親との再会
エピソードとして物語にとてもふさわしい内容が語られたような気がした。
お迎えが来るっていうのはこういうことなのかなと考えてみたりもする。
他にも彼女の晩年を付き添った“ビジョンフリーゼ犬の六花”の以前の飼い主も登場していたね。
様々な人の生き方死に方を描くドラマがある中で、今回の描き方はとても秀逸だなと感心して見ていたね。
ネットの情報を見ても、涙 涙の報告が多かった。
海野雫は、自分が死んだ後は散骨を希望するとあった。
自分の死後の事についてもきちんと希望を残して亡くなる。
この辺の死生観は私的にはちょっと違うなとは思ってみたが、生きること死ぬことにどんな認識を持っているかでその反応はそれぞれ違うはず。
作家小川糸
彼女がこの小説を書くに至ったきっかけは自分の母親の癌の闘病記にあったらしい。
母親が癌になった時、『死にたくない!』と言ったんだそうな。
正直でまっすぐだなと彼女は感じたらしいが、彼女自身は生き死にに関しては覚悟を決めていたと思っていたようだ。
とにかくこの物語で
驚くほど丁寧に生きること死ぬことを描いている。
何を思って何を感じて日々暮らしているのか。
自分が死んでいくことをどんなふうに受け止めていくのか。
そういったことへの感じ方がこのドラマの主題だとも言えるだろう。
いくつか見たドラマの中でもこのドラマの真面目な描き方は私の中でも驚くほど好感度が高い。
生きること死ぬこと、そしてそれらを統合して受け入れる真心。
私の中でも間違いなく記憶に残るドラマだったと思う。