とにかく用事がなければ家にいることがほぼ全てみたいなもの。
自宅でのお供と言えばそれはもうテレビ。
あと、こういったブログを書くためのインターネット。
テレビの前のソファーに日がな一日座っているか、寝転がっているか。
たまにコーヒーを飲んだり何かを食べてみたり。
たまたま、昨日録画にしておいたテレビを見たところが、普段はドラマなんか全く見ないのだが、このドラマは意外な位面白かったので、1時間半しっかり最後まで観ちゃったね。
目次
黒い画集 証言
調べてみてわかったのは最初に松本清張が発表したのは週刊朝日に掲載していた短編小説。
それが初回1958年だから相当古い。
しかし当時から注目だったらしく何度も映画化され、またドラマ化もされてきた。
今回のNHKでの2020年度の作品は、脚本に朝原雄三を起用している。
ちなみにこの朝原雄三さん。
調べてみてわかったのは釣りバカ日誌の映画バージョンを2003年頃からずっと監督し続けてきた。
様々な業績を経て今回のドラマの脚本監督に関わった。
ドラマは伝統的な作品をリメイクする形で作られたと言える。
オリジナルとは違った作り
オリジナルの作品は会社勤めの主人公が周りに秘密にして愛人を囲っていることが前提で物語が進められる。
ふとしたことで愛人とあいびきしている最中に知り合いに出くわしてしまって、思わず会釈をするところから事件に巻き込まれる設定になっている。
この思わず会釈をしてしまった相手が殺人事件の犯人とされるが実は、犯人ではなく唯一のアリバイ証明のために主人公の証言が必要なところ。
しかし、その時愛人と一緒にいたことがばれるのは本人にとって絶対にまずいことなので偽証をしてしまった主人公は、その後思い悩む。
自分の秘密にしていた他人には決して探られたくない部分を隠すために嘘をついてしまったことになる。
そのことで激しく自分を責め、悩み、家族のためにどうするべきかを必死で模索するのだ。
今回テレビドラマで描かれた設定は最初のこういった部分を大幅に改定。
愛人を囲う設定を、女性ではなく男性に変えた。
さらに会社員の設定を医者に変更。
物語の大まかな流れはそのまま踏襲しつつ、全く別な登場人物としてストーリーを作り上げている。
物語はゲイ(バイセクシャル)の人間関係を採用
内緒でゲイの愛人がいる設定。
この愛人との逢引の最中にたまたま例の会釈をする誤認逮捕された知り合いに、アリバイの証明を求められるのだ。
自分自身の秘密がばれてしまうのを恐れて、アリバイの証明では嘘をつくことに。
会釈されたことなど知る由もなくと。
しかし、根が生真面目な主人公は 、偽証してしまったことと家族とりわけ自分の妻にどうしても隠したい秘密を作ってしまったことで、重い悩み苦しみ続けることに。
ドラマを見ていて感じたのは、役者一人ひとりの演技はそれほど印象には残らない。
ただし、ストーリーの作りが実に巧みになっていて、その部分で見ているものを引き込むだけの力があったなと。
NHKのドラマにしてはずいぶんと特異な話題を取り上げたなという気がする。
愛人と体を重ねるシーンもテレビながらそれなりにきちんと描いていたところは大いに評価できるだろう。
ドラマを構成する上でどうしても必要なシーンだよなとその時は感じながら見たもの。
物語は主人公がどのように自分の内側に向いていってそこで葛藤するか。
そのことがこの物語の中心的な部分。
最後にいたたまれなくなって、すべてを自分の妻に告白してしまう。
この物語の完成度の高さはそこから先のオチの部分にもある。
妻に謝罪をし、自分の罪を認めて気持ちを楽にしようとした主人公。
その主人公に妻がとった行動が実に秀逸。
主人公は真面目で気弱な医者の設定だったが、その妻は夫を支えるつもりが結局は自分の身を守るために大きな間違いを犯してしまう。
人間の心に潜む 欺瞞 詭弁 弱さがテーマ
中心的な役割を果たすのは主人公である谷原章介。
彼の心の中の葛藤に合わせてストーリーが作られる。
その夫を支えようとする西田尚美。
実は彼女はこの物語の最後のキーパーソンとなる。
夫を許すような素振りを見せながら、実際は自分の生活や家庭を守ることにシフトするのだ。
つまり、偽証罪に問われる夫を見捨てて、自分自身の身の保全を図る。
松本清張は他にも様々な小説を書いているが、それらは皆人間の弱さのようなものをテーマにしている気がする。
正直なところ読み物としてあまり接した事はないが、こうしてドラマ仕立てになると何気なく見てしまうのだ。
人間の心の奥底を描くと驚くほどのリアリティーを持って物語は進行していく。
と同時にドラマを見ていて感じたのは、これがオリジナルの文章で読んだ場合はどんなふうに感じるのだろうかと。
原作となる物語がどれだけ優れているのかを感じるには、オリジナルを読むしかないので。
いずれチャンスを見て読まなければならないなと感じた次第。